2015.10.1
広告は善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーが騒がれている理由
2015.10.1

広告は善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーが騒がれている理由

gooスマホ部編集部
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nova3
9月16日にリリースされたiOS9。多くの新機能を搭載しているなか、「コンテンツブロッカー」という機能が物議を醸しています。どのような機能で、私たち利用者にどのような影響があるのでしょうか。


善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーから見る広告のあり方



そもそも何をする機能?「コンテンツブロッカー」はiOS9の新機能ですが、ただiOS9にアップデートしただけでは動きません。サードパーティ製のアプリをインストールすることでコンテンツブロッカーの機能を使うことができます。開発者はこの機能を使ってiOSのブラウザであるSafariで何を非表示にするかコントロールすることができます。例えば「一切の画像を表示させない」とか、「URLに『test』を含むファイルは読み込まない」といった指定ができるようになります。
なので何をブロックするかは開発者の自由です。が、最も需要がある用途として考えられるのが、「広告ブロック」です。主要な広告配信サービスのURLを登録しておくことで、Safariで広告が表示されないようにする仕組みとなっています。実際リリースされているコンテンツブロッカーのほとんどはこの目的でしょう。なお、「Appleが広告ブロックの機能を追加した」と思われている方もいらっしゃいますが正しくありません。「広告ブロックを提供できる仕組みを用意した」というのが正解です。

どうして騒がれているの?広告がブロックされることで、恩恵を受ける人と損害を被る人がいるためです。ネットサーフィンする利用者にとって広告ブロッカーを使うメリットは複数あります。
・広告がなくなることでコンテンツに集中できる・バナーなどの画像を読み込まずに済むので、データ容量の削減になる・上記の理由で、ページの表示が速くなる・クッキーを使ったトラッキングなどによるプライバシーの侵害を防げる



善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーから見る広告のあり方



善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーから見る広告のあり方


米国のFox Newsを表示させてみたところ。広告ブロックアプリをインストールすると右図のように広告が表示されなくなる
一方、コンテンツを提供しているウェブサイトの多くは、広告を表示することで広告主から対価を得ています。当サイトにも広告が掲載されていますね。ほとんどのサイトには何かしら広告が掲載されていると言えます。民放のTVやラジオは無料で視聴できますが、CMが入りますね。それと同じことと考えるといいでしょう。
サイト運営者にとってのデメリットは、
・収入源のひとつである広告収入が失われる・トラッキング不可になるとGoogle Analyticsなどを利用したユーザ行動調査が行えなくなり、ウェブサイトの改善が困難になる
などがあります。特に中小規模のサイトでは広告収入が売り上げの50~75%を占めるというデータもあり、広告ブロッカーの流行は死活問題に繋がります。


でも広告ブロックって以前からあったよね?はい。特にPCのブラウザ、ChromeやFirefoxで利用できるアドオン、Adblock Plusは有名で、最初のリリースは2006年にまで遡ります。使用している人も多いのでは。今回騒ぎになっているのは、すでにモバイルにおけるコンテンツ消費がPCのそれを上回り、中でもアクティブな利用者の多いiPhone/iPadで広告ブロックが可能になった、という点で騒がれているのだと思います。それだけ影響の大きいプラットフォームということですね。

結局どっちが悪いの?うっとうしい広告を拒否したい利用者と、広告収入で生計を立てるパブリッシャー。どちらにも言い分があり、どちらか一方が悪いとは言えません。そのことを如実に示すできごとがありました。
著名なアプリ開発者、マルコ・アーメント氏(Instapaperの生みの親)は、iOS9のリリースに合わせ、広告ブロックアプリ、「Peace」を発表しました。このアプリはリリース直後から米国App Storeの有料ランキング1位となり、その売上額は相当なものだったと推定されます。
にもかかわらず、リリースからわずか36時間後、マルコ氏はPeaceをApp Storeから取り下げました。その理由について、彼はこう述べています。「広告ブロッカーは多くの人に恩恵を与えるが、その一方で別の人々を傷つけてしまう。そしてその多くは傷つくべきでない人々だ」。Peaceが与える影響の大きさに耐えがたくなったとし、その後Peace購入者全員に返金されることが決定しました。マルコ氏は「自分がこの争いに参戦するのは辛い。もっと技術的な問題に立ち向かっていることが自分にとっての『Peace(平和)』なんだ」とこの日のブログを締めくくっています。

今後どうなっていくの?ここからは完全に筆者の想像です。このiOS9の件で初めて、ウェブ上の広告に対する広範囲な議論が巻き起こっていると言えます。「そもそもなぜユーザは広告をブロックしたいと思うのか」を考える必要があるでしょう。目障りでなく、おとなしいバナーに留まっていたら、Adblock Plusも生まれていなかったかもしれません。それがいつしか動くバナーになり、ポップアップウインドウが表示されるようになり、音が鳴り、cookieでトラッキングされるようになり、広告主がユーザの目を惹きたいと工夫するほど煩わしい広告に変貌していきました。広告提供者はこれを反省し、「適度な広告」の運用にシフトする必要があるでしょう。さもなくば広告ブロッカーが一層広まり、自らの首を絞めるだけです。
 

善か悪か?iOS9コンテンツブロッカーから見る広告のあり方


一方、利用者側の理解も必要です。パブリッシャーもビジネスなので収入源が必要です。利用者から料金を徴収しない代わりに広告を掲載しています。TVと同じです。広告ブロッカーの利用者が増えてしまうと現在のインターネットのあり方が崩れ、「お金を払わないと何も見られない」インターネットになってしまうかもしれません。
要はバランスの問題なのです。広告が善か悪かではなく、「許容される広告に留めよう」ということだと思います。現在では適度な広告の普及に努める「Acceptable Ads」という業界団体もあり、過剰な広告に終止符を打つべく活動しています。また、各国における広告ブロッカー利用率をPageFairのサイトで確認できますが、日本での普及率はまだ2%(ポーランドでは35%)。この普及率が上がる前に、広告のあり方を再考しなければなりません。
今の状態は「調子に乗ってやりすぎた広告主が反撃を食らっている」状態に見えます。実際やりすぎた部分があるのは事実でしょう。ですが、「有料インターネット」になってしまっても困ります。この騒動を機に、業界全体が良い方向に向かうことを願ってやみません。
nova3

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